関西人Yeni.の横から失礼します。vol.41

 

ちょっと聞いてくれませんか?めっちゃ腹立つことあって。今ね、歴史ある第42回イスタンブール映画祭が開催中(※4月18日迄)でして、私も何年ぶり?っていうぐらい久々にチケット購入しまして、ドキドキワクワク楽しみにしてたわけですよ。この映画祭、毎回フューチャーされる監督の代表作が纏めて上映されるっていうので、今回はアメリカのウィリアム・フリードキン監督の映画『恐怖の報酬』『12人の怒れる男 評決の行方』に行ってきた訳です。

 

 

まず『恐怖の報酬』。これ、何。何この手に汗握るハードアクションは!上映中ずっと夫フローラの肩握り締めては「うわ!」「ぎゃっ!」「ヒィッ!」「おおおっ!」と最後までうるさいうるさい、自分。それも今みたいなCGと違いますよ。全部実写です。ネタバレになるので詳しくは書きませんが、自称映画好きを名乗る自分が恥ずかしった、ホンマ穴があったら入りたい。こんな名作を、この歳になるまで観てなかったことが。

ラストがね、これまたええんですわ。なんとも余韻のあるエンディングで、グッときて思わず涙しましたよ。音楽がまたシビれるほど良くて。なんやねん、素敵すぎるやんフリードキン監督、やってくれるやん!と心の中で拍手喝采、エンドロールが始まりどっぷり余韻に浸ろうとしたその瞬間・・・「映画終わったな」「さ、帰ろか」バタバタ、ドタドタ、スタスタと、どんどん観客が席を立つではないか。って、いつものことやけど。私がトルコで一番嫌いなことの一つ、エンドロール始まったら速攻観客が退席すること。しかしまだここはよかった。小さな劇場で観客もそう多くなかったし、前から2列目だったので退席者がそこまで気にならなかったのだ。

ところが別の日、フリードキン監督映画二作目の『12人の怒れる男 評決の行方』に行った時ですわ。その日は私おひとりさまで別の劇場での映画鑑賞。そして本作がこれまた・・・何これ最高やん。おもろ過ぎるやん。2時間ずっとですよ、写ってるのは控え室の中にいる12人の陪審員が殺人事件の評決下すまでの議論の様子だけ。ずっと同じ部屋で喋ってるだけです。あとその横にあるトイレでおしっこしたりするだけ。セットひとつだけですよ。それだけで2時間持たせるか?!ううう、と唸りました(心の中でですよ勿論)。一旦観始めたら、もうやめられへん止まらへん(かっぱえびせんか!)。なんという巧みな脚本。俳優陣のなんという演技のうまさ。自称裁判劇好きを名乗ってきたくせに、自分基本中の基本おさえてへんやん!自分全然あかんやん!映画好きのみなさん、大変失礼致しました・・・。

驚きの展開のままラストへ突入。あまりの素晴らしさに、やっぱり映画ってええな、最高やな!とひとりごち、またまた素敵なエンディングの音楽と共にどっぷり余韻に浸ろうとしたら・・・またここでも「映画終わったで」「さ、帰ろか」組がドヤドヤ、ガサガサ、バタバタ退席し始めたー!! 折しもエンドロールでは主役の名優ジャック・レモンを筆頭に12人の陪審員を演じた大物俳優たちが、名前とともに一人ずつ画面に映し出されていた時だった。しかし無数の失礼な観客の頭の影で銀幕は無残に覆われ、ジャック・レモンの髪の毛しか見えへん!! 誰も見えへんやん!!! 怒り心頭、手がグーになって思わず、「見えへんやろ!お前ら座れッ!!!!!」と怒鳴りたくなった(いや怒鳴ってませんがね)。だって、エンドロール含めての映画やん?エンディング見て、その音楽も聴いて、“映倫”と“ドルビーサウンドマーク”過ぎるまで座ってんのが、それが映画へのリスペクトちゃうの?はぁ〜、わかってへんわホンマ。それでも、心ある少数の映画好きもいて、その子らちゃんと最後まで座ってたのは偉かったわ( 何様やねん自分)。

 

 

去る2月にトルコ南東部で大地震があってから、様々なイベントがキャンセルされ、歌舞音曲も自粛されてきた。被災者はいうまでもなく、全国民が直接的または間接的に心的外傷後ストレス障害を抱えたまま2ヶ月以上が過ぎた。私も被災地を自分で歩いてからは、イスタンブールに戻っても、向こうで出会った被災者たちのことが頭から離れず、無力な自分に良心の呵責を感じて何をしても虚しかった。そして、そのうち大地震が来ると言われているイスタンブールに住む限り、自分もいつ同じような目に遭うかわからないという不安。

でも。そんな状況にいても、先ほどのフリードキン監督作品のような名作に出逢った時、私は心震えるのだ。先日お亡くなりになった坂本龍一さんのピアノを聴くと、涙が溢れるのだ。大好きなフラメンコを下手ながら踊っている時、心から開放感に浸れるのだ。美しいものに触れた時、芸術が、私を癒してくれるのだ。こうやって少しずつ、明日への希望を取り戻せるのだと思う。

被災者の一人で、婚約者を震災で亡くした若者が、テント村でこう語ってくれたことを思い出す。

「希望をなくしたら、人間終わりです。僕は希望を捨てません」

 

 

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 読み切り![イスタンブール]/ トルコでこどもを育てています。

 vol.40                             aaaaaaaaaaindex  

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