関西人Yeni.の横から失礼します。vol.29

2022.05.24Naviコラム

キラ（kira）とは、トルコ語で家賃の意味である。そしてトルコで昨今頻繁に報道されているのが、このキラの異常な高騰だ。そもそもインフレ率も、去年比で69.97%上昇(2022年4月統計、TUIK(トルコ統計機構)データによる)した。もっとも、ここで生活する人間としての実感は70%どころではなく120〜130%を軽く超えているが。インフレも酷いが、外貨に対するトルコリラの暴落で一番大きい紙幣である200リラも、今では10ドルちょっとになってしまった・・・。一番大きい紙幣がですよ！紙屑に堕ちてゆくトルコリラ、一体どこまで落ちてゆくのか。ここの経済相さんはお目々をキラキラさせて、「これ以上落ちようがない、だってどん底なんだもん」と言っていたが、それから更に落ち込んだので、まだまだ先は見えない。

これだけ物価が高けりゃ、キラも当然跳ね上がる。現状の2倍、3倍(!)の家賃を大家から請求され、もしくは立ち退きを迫られ、大家と借り主の間で裁判が絶えないという。収入の約3分の1程度までを家賃が占め得るというのがなんとかヤリクリ出来る範囲だという私の認識だったが、トルコで物価上昇率に見合った給料貰ってる労働者なんていーひんし、一体誰が払っていけるというのだ！！！自分の持ち家に住居する人は幸いだが、賃貸アパートで暮らしている人々にとっては家賃契約更新が刻一刻と迫り、今回大家はどれほどの値上げを提示して来るのかと生きた心地がしない。実は私たちYeni.一家が、賃貸アパート暮らしだ。持ち家は別の場所にあるのだが、老朽化したアパートが近々都市再開発対象となる可能性があって、建て直しが決まれば早々に取り壊され、持ち家に戻ることが出来なくなってしまう。もちろん、綺麗に建て替わって耐震設計になるのは大歓迎なのだが、今このタイミングかぃ・・・。現在住んでいるアパートの家賃が到底払いきれない値段になれば、出ていくしかない！ところが色々調べてみると、新たに賃貸アパートを探したとしてもよっぽど辺鄙なところへ引っ越さない限り、ここより安い物件が見つかるとは思えないのだ。Yeni.一家、路頭に迷うのか？！

トルコに住んで初めて、この先住むところがないかもしれないという恐怖に襲われている矢先、毎週愛読しているトルコの週刊新聞『オクスィジェン（Oksijen）』（2022年5/13-18号付）が私の気持ちを代弁してくれた。特集記事のタイトルが「キラ難民たち」。私らやん!(泣) 記事では、私のように都市中心部に近いエリアに長く住んでいる中流階層の人々のインタビューで構成されていた。あるカップルは、住居する賃貸アパートが都市再開発対象で取り壊されることになり、3ヶ月以内に立ち退きを迫られているという。引っ越し先を探そうにも、去年秋以降から続く家賃高騰でもはや近辺で借りられる物件などなく、地方に住むしかないのかと途方に暮れている。別のカップルは、住居する持ち家が都市再開発対象となり引っ越さなければならないが、一向に予算に合う賃貸物件が見つからない。苦肉の策で、最近結婚した子どものいない友達夫婦と一つの家をシェアすることを真剣に検討しているという。状況は非常に深刻だ。自分がまさにその立場にあるので、身につまされる記事だった。

最近のニュースでも、アパート物件を丸ごと借りられない人は、一部屋のみを間借りするというケースが増えていると聞く。貧窮する大家も、空き部屋を貸せば少しでも生活費の足しになるという訳らしい。大家も大家で、大変なのだ。これだけ家賃が高騰して借りられる人などいるのかと思うが、それがいるのだ。ある不動産屋で聞き込みしたところ、外国人にとっては外貨に換算すればむしろお手頃な値段であるらしく、シリア難民をはじめとする中東系や最近では戦火を逃れてきたウクライナやロシアからの借り手も増えており、そういった外国人からの需要過多が更に家賃高騰に拍車を掛けているという話だった。トルコ政府には、例えば家賃の上限を厳しく定める法律の制定や、大家が借り主に無条件で立ち退き請求ができる権利が発生する賃貸契約10年期限の延長など、法的にもっと借り主を護ってくれるような制度が求められている。というか、私が求めたい！

とにもかくにもウチの大家とはなんとか合意に至れるよう、夫フローラに家賃交渉で頑張ってもらうしかない。そうでなければ数ヶ月後、風呂敷包み抱えて路頭に迷うYeni.一家が目撃されるとか、シャレならん！！！