関西人Yeni.の横から失礼します。vol.25

 

去る3月10日、俄かにトルコ南部が騒がしくなった。そう、リゾート地として世界的に有名なアンタルヤ(Antalya)で、まさに世界がその動向に注目するロシアとウクライナの外務大臣が、トルコの外務大臣を仲介役として三者外相会談を行ったからだ。

アンタルヤといえば、私が(勝手に)天国に一番近い島(正確には島ではなく半島)と謳っている、これまたリゾート地・カシュ(Kaş)〜ケコワ(Kekova)ルートの拠点となる大都市である。ところで私は、アンタルヤの海は苦手だ。そもそも地中海は砂浜から急にドボンと深くなるので、私のような元カナヅチは足元を取られがちで油断ならない。昔、日本から姉が遊びに来た時にアンタルヤへ旅行に行ったが、参加した日帰りクルーズの海水浴タイムで溺れかけた経験がある。溺れかけたといえば、友人の住むエーゲ海のこれまたリゾート地アイヴァルック(Ayvalık)でも溺れかけ、はたまた義理両親のサマーハウスのある北エーゲ海でも足のつかない場所で水を飲んで溺れかけたことがあった。つまり、トルコ全国の海で死にかけている私は「元」カナヅチではなく、「現役」カナヅチだということか・・・。

 

 

話が大きく横道に逸れたが、そんなリゾートムード満点の熱帯アンタルヤの地で微妙な三者会談が行われた前夜、私も諸用でアンタルヤに降り立った。空港のあちこちにある案内表示には必ず、ロシア語表記があった。過去に何度もこの空港に降り立っているはずなのに、今までほとんど気に留めなかったが、今回改めていかに多くのロシア人観光客がアンタルヤを訪れているかを実感した。実際、トルコを訪れる観光客の上位2位はロシア、4位はウクライナからである(ちなみに1位はドイツで、3位は隣国ブルガリアから。文化観光省2020年1〜8月統計より)。観光大国トルコとしては、ロシアもウクライナも非常に重要なお客様なのである。ロシア語とウクライナ語は類似しているらしく、ウクライナ語が分かればロシア語も読めるのかもしれない。

あるリゾートホテルにチェックインしたのが、夜中の1時前。疲れ切っていた私がロビーに入った途端、金髪のお姉ちゃんが甘い声で「いらっしゃいませ〜♡」と私を出迎えてくれ、花束までプレゼントしてくれた。え・・・なんで?今までいろんなホテルに宿泊したが、チェックイン時に花束を貰ったのは初めてだ。お姉ちゃんはチェックインのお手伝いをしてくれたり、ドリンクサービスをしてくれたりと、甲斐甲斐しく私の世話を焼いてくれたのだが、彼女の流暢なトルコ語をよく聞くと、癖のあるアクセントからロシア系の人だとわかった。なるほど、ホテルにもロシア語を解するスタッフが常駐しているのかー。よっぽど多いんだな、ロシア人。

翌日の早朝、富裕なロシア系宿泊客達がホテル敷地内のゴルフコースを回ろうとゴルフバッグを抱えて颯爽と出て行ったのを見て、彼(か)の国は隣国に戦争を仕掛けているのに、どこ吹く風かここは別世界なのだと複雑な気持ちになった。

ヨーロッパ諸国がロシアへ、そしてロシアからの航空機乗り入れを拒否する中、トルコは今もロシアと空路で行き来出来る数少ない国である。石油や天然ガスなどのエネルギー資源から小麦やひまわり油などの食料品までをロシアとウクライナからの輸入に依存するトルコは、更に莫大な観光収入源の確保という意味でも両国を絶対に敵には回せないのだ。今年のトルコ観光シーズンには、ロシアからは引き続き観光客が来るだろうが、戦火に包まれたウクライナはそれどころではないだろう。黒海を挟むとはいえ近隣国であるロシアとウクライナとの戦争は、様々な角度からトルコに悪影響を与えているのだった。

 

 

さて、肝心の三者外相会談はと言うと、これといった建設的な協議には至らなかった模様。それでもロシアともウクライナともうまくやっていきたいトルコが仲介役となって、外相レベルで両国を引き合わせたことは評価すべきだと思うのだが、どうだろう。政治家というにはあまりに誠実そうな若きウクライナのクレバ外相に対して、18年間も外務大臣を務めているロシアの老獪(ろうかい)ラブロフ外相は、ゼレンスキー大統領とプーチン大統領と同じように、あまりにも対照的な人柄だったが。

あれ、なんかいつもと毛色が違うな・・・と思う読者の方もおられよう。まるで時事解説のような口調ぶっているが、日本人とは言えトルコの一市民としてはロシアのウクライナ侵攻は他人事ではなく、日々の生活に関わる深刻な問題なので力が入ったのだ。

そう言えば、アンタルヤのホテルで私を出迎えたロシア人のお姉ちゃんは、どうして私に花束を渡したのだろう。私よりチェックインが遅れた同行者達には花束はなかったという。私が下手にトルコ語を喋るので、トルコ系諸語を話す我々に近い平べったい顔の、旧ソ連領中央アジア民族と間違われたのだろうか。真偽のほどはわからないが、イスタンブールではないここアンタルヤで、トルコとロシア、ウクライナとの深〜い繋がりを感じた一夜であった。

 

 


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 vol.24 向こう三軒両隣                   aaaaaaaaaaindex  

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