関西人Yeni.の横から失礼します。vol.42

2023.05.22Naviコラム

このところ国をあげて総選挙ムード一色だったトルコだが、去る5月14日にとうとう大統領選挙と議会議員選挙が実施され、蓋を開けてみれば現職大統領を含む大統領候補の誰一人として過半数を取れず、今週5月28日に決選投票が行われるという展開になった。なんと国内投票率は88.92％。驚異的な数字である。ほぼ10人のうち9人が選挙に行く国なのだ。今回の大統領選挙では4人の候補者が名乗りを上げていたが、土壇場になって候補者の1人が出馬を取り下げ、残る3人が競った形である。そもそもトルコの大統領選挙で勝利するには、50％以上の得票率を獲得せねばならない。もし候補者全員が過半数を割れば、上位2人の候補で一騎討ちの再選挙が行われ、得票数の多い方が勝ちとなる。やれやれ選挙も終わってやっとトルコも落ち着くかと思っていたのに、決着はまた持ち越しになってしまった。心乱れる2週間、どうしてくれる・・・。大統領選挙ばかりが注目されていたが、当然議会議員選挙の結果も出ており、現状と同じく与党連合が議会の過半数を占める大勢となった。
決選投票で戦うのは、20年にわたって首相と大統領を務めてきたレジェップ・タイイプ・エルドアン大統領と、“トルコのガンジー”とも評される、野党統一連合の擁立する野党第一党ケマル・クルチダルオール党首。

さて、どうなるか。

強硬に大統領制をおっ立てたエル氏と、それ以前の議会民主制に戻したいクル氏。真っ向から対立する二人なので、決選投票はある意味、現状で満足なのか、それとも政権交代を望むのか、トルコの人々にとってこの国の将来を大きく左右する国民投票であるとも言える。

ところで私にはトルコの選挙権がない。トルコ国籍がないからだ。一方で日本の国政選挙には、毎回在イスタンブール日本総領事館で参政している。ふと今回トルコ総選挙ニュースを見ていてトルコの投票用紙(写真左）扱いにくそうやなと改めて思った。大統領選向け用紙は候補者の顔写真が出ているから一目瞭然、支持する候補者の欄に『エヴェット（＝“せや、この人がええねん”の意味）』印のスタンプを押すだけ。ところが議会議員選向け用紙は各党連合が複数存在し、かたや単独で出馬する党もあり、ズラッと党名とロゴが横並びして非常に見にくい。投票用紙の長さたるや、なんと1メートル！タスキか。そこから支持する党の欄にまた同じスタンプを押すのだが、リストから探すだけでも大変だ。
スタンプを押せばそれで済むのでもない。押したてスタンプのついた紙を折りたたんだら、別の場所にもスタンプインクがべっとりついてしまう恐れがある。そらせやろ。こうなると、無効票と数えられてしまう恐れがある。そんな理不尽な！夫フローラは、押したスタンプのインクが紙の別の場所にうつらないように、スタンプ位置が外側になるように折りたたんで封筒に入れたという。その方法をわざわざ解説しているニュースも見た。ムズッ！！ってかいっそインクとかやめたらええやん？鉛筆書きで◯印でえーやんか。それを言うとフローラは、後から消しゴムで消される恐れがある、と反論する。誰が消すねん？・・・選挙不正が横行している疑いが濃いこの国で、消せる鉛筆か消えないスタンプかて訊かれたら、やっぱりインクなんや、無効票になる可能性大でも。
大統領選向け用紙はまだいいが、スタンプ押した1メートルの長さの議会議員選向け用紙、どうやってインク移りさせずに封筒に入るように折りたたむのん？折り紙得意な日本人ならまだいけるかも知れへんが。その実、封筒モコモコに膨らんで、投票箱の細い入れ口に入れるのにも一苦労した話も聞いた。なんか、効率悪すぎるわ。連合名と党名書いた一覧表を投票スペースに貼り付けて、それ見ながら有権者が空欄に党名書くのはあかんの？そしたら紙小さくて済むやん。そうなると、文盲の有権者はどうすんねん、ちゅー話になんのか。
そうそう、もう一つの重要ステップについても述べなければ。封筒になんとか用紙を収めた後、封をどうするか。フローラは、封筒のフラップのノリ部分を舐め舐めベローンして貼り付けたらしい。いつの時代やねん！ましてやパンデミック後のこの世の中、あかんやろそれ？！（封をせずに投票箱に入れる人もいるようだが）

去年だったか、トルコも世界のトレンドに倣って封筒を使わず直接投票用紙を投票箱に入れる方向になる模様、という報道を見たが、やっぱり採用されなかったようだ。「勝手に開けられて中身改ざんされたらどうすんねん」と言うフローラの声が聞こえてきそうだ。と思うのは、こんなニュースも耳に入ってきたからだ。アンタルヤ県でトルコ国籍を持つ外国系有権者が、接着剤を持ち込んで封筒のフラップをびっちり糊づけしたため、開票作業時に係員が封筒を開けられず四苦八苦したが、封筒を破損することなく無事開封することに成功したというものだった。封筒が下手に敗れてしまった場合、これも無効票と数えられる恐れがあるのだろう。・・・ほんま要領悪い。日本みたいに両面テープ式にしたらええやん。だがそれで開封時に封筒が破れたら、アウトか。鉛筆あかん、字書くのあかん、封するのに変に糊づけあかん。スタンプインク紙に移ったらあかん、紙きちっと折らなあかん、あかんあかんあかん。
・・・どうせーっちゅーねん、トルコ有権者に！投票時にここまで神経使うの、トルコぐらいではなかろうか。ただでさえ苦労多いのに。