関西人Yeni.の横から失礼します。vol.33

先日、トルコ人の友人から割礼式に招待された。彼の10歳の息子が割礼し、その披露宴を催すというのだ。結局諸事情により出席は叶わなかったが、割礼式と聞いて懐かしく忘れがたい思い出が蘇った。ところで割礼とは、イスラム教徒の男子が子どもの頃に行う儀式で、要は生殖器の先っぽの余分な皮をちょこっと切除することである。息子ポケモンは今のところ無宗教だが、衛生面や成人になってから起こりえる生殖器の悩みが生まれないよう、生後2ヶ月の時に病院で施術してもらった。今は赤ちゃんの頃に割礼を済ませてしまうケースが多い。生後すぐ施術する場合もある。

夫フローラも、例に漏れず経験者の一人。自分の割礼式の思い出をよく聞かせてくれたものだ。フローラは5、6歳の時に割礼したが、食卓に載せられ、親戚から両手両足を押さえつけられ、割礼師なる人に麻酔もなしにちょん切られたという。こ、怖。まさに、まな板の上のフローラ。ただただ気の毒である。フローラの年代やそれ以前の男性達には、物心ついた時期に行われたこの恐ろしき儀式がトラウマになっているらしい。そらなるわ。そんなことをずっと聞かされてきたので、ポケモンの割礼は赤ちゃんの時期にとっとと済ましたという訳だ。生後2ヶ月のポケモンはまだ寝たきりで寝返りもうてない時期だったので、かえって痛みも少なかったろうと思う・・・知らんけど。動き回る年齢になると傷口が衣類に当って痛むので、トルコでは割礼後の子どもが履く保護パッド付きパンツなるものも販売されている。

ポケモンの割礼が終わった時、担当の執刀医さんが「どうぞ」と言って切った肉片を渡してくれたが、産後のお世話にきてくれていた日本の母が、それを見て卒倒しそうになっていた。「健康な体で生まれてんのに、なんでわざわざ切んねんッ!?(泣)」と言った母、ごもっとも。家に帰ってからポケモンのオムツをそっと開けると、患部にガーゼが貼り付けてあった。そっとガーゼを剥がしてみると以前はゾウさんの鼻形状だったのが、そこだけ成人のソレに変化していた。ご、ごめんな、痛い思いさせて。せやけどこの方が生殖器にカスが溜まったりせんと衛生的やし、大人になった時性生活に支障もでーへんし、君のためやと思うねん。私は毎日半泣きで患部に化膿止めクリームを塗り、やがて傷口も綺麗に完治したのだった。

ところで前述の肉片だが、「この肉片は乾燥させて切り刻み、割礼式のお祝いの時に客に振る舞うピラフに入れるんや」と言ったフローラの悪い冗談を真に受けた私は、とりあえずテレビの上にティッシュを敷いて、その上に置いて乾かすことにした。日本がへその緒なら、トルコは先っぽか・・・などと勝手に思っていたら、フローラが「冗談に決まってるやろ!そんなん置いといたらハエくるわ!捨てや!」と言われて捨ててしまった。でも今思えば、残しておけばよかったか。大きくなったポケモンが、「これが僕の先っぽだったんだ〜」と感慨深く見ることもあるだろうに・・・ないわッ!!


昔は割礼を行なった直後に披露宴を催してお祝いをしたようだが、昨今は先に割礼は済ませておき、時期を置いて披露宴のみを行うのが主流らしい。皆さんも街中で見かけたことがないだろうか、小学生ぐらいの年頃の男の子が冠を被って王子様のような格好で歩いているのを。その子は自分の割礼披露宴に行くのである。我が家では当初、披露宴など必要ないよねと話していた。ところがフローラ、後になってから、ポケモンに割礼式の思い出がないのは可哀想だ、やはり何かお祝いをしようと言い出した。まぁええけど。

 

 

ある夏の日に我が家が行なった割礼祝い、それは郊外の畑のど真ん中で参列客に食事を振る舞う、というスタイルだった。何を振る舞ったか、それは上述の肉片・・・嘘です。

こんがり羊の丸焼き肉を熱々のピラフに混ぜた、ご馳走である。ところがこの羊の丸焼き、イラストに描こうと思ったが残酷すぎて絵に描けなかった。Kuzu cevirme(クズ・チェヴィルメ、羊の丸焼き)は今は亡きフローラの叔父が、彼の友人と一緒に全て手配してくれ、それは畑で調理された。豚の丸焼きを想像してもらうとわかりやすいかと思う。豚を羊に置き換えたものが、それだ。焼く前にセットする工程も全て畑で行われたが、私はビビって遠目から見るのがやっと。肉片と言い、羊の丸焼きと言い、映画『ブレイブハート』か『羊たちの沈黙』の世界である。おぉ・・・

まずまずのお天気で始まった野外でのお祝いだったが、あれよあれよという内に雲行きが怪しくなり、突然の暴風雨が畑を襲い始めた。風速何十メートル?というような激しい風と土砂降りの雨に、参列客全員ずぶ濡れに。雨のせいで肉がなかなか焼けない。風除けにと男たちは必死で会場にビニールシートを張ろうとするが、あまりにも風が強く飛ばされそうになる。やっとこさ肉が焼けたはいいが、今度はその巨体を解体して、肉を細かく割かねばならない。ヒェ〜。それをピラフに載せるのだ。ここは給食センターか、と思うような大鍋から、肉入りピラフを皿に盛る作業をしていた我々女たちもびしょ濡れ。どこからやってきたのか、肉とピラフに群がる大量のハエ、はえ、蝿。オェッ・・・

嵐の中、みんなが全身濡れ鼠状態で、それでも親戚一同肉入りピラフを頬張ったあの日。今でも忘れられない思い出である。肉片は残せなかったが、ポケモンに強烈な思い出は残せたかと、親としてちょっと誇らしい気持ちでいる。

 


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 vol.32 地下宮殿                   aaaaaaaaaaindex  

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