関西人Yeni.の横から失礼します。vol.9

Istanbul Navi 2021年7月号

 

7月1日からいよいよ、トルコは段階的通常化の最終段階を迎える。つまり、ほぼ全ての行動規制が解除されるのである。やった、いつでも人に会える!夜も出掛けられる!外ごはん!休暇!旅行!…… ととと、ちょっと待った。夢は膨らむが、感染力の強いデルタ変異株が猛威を振るう昨今、決して油断は出来ない。現にワクチン接種が進んでぐんぐん通常化を進めていた諸外国も、デルタ変異株で感染者が再び増加したことから規制緩和を遅らせたり後退させる決定を出しているのだ。ここで思い出されるのが、昨年の6月1日から始まったトルコの急激な規制緩和だ。あれで減少傾向にあった感染状況が再び悪化し、トルコは秋以降再び長く厳しい行動規制生活を強いられたのだった(遠い目…… )。今、国内でワクチン接種が猛スピードで進められていることが救いだが(現在18歳以上が接種可能)、昨年の二の前にならないよう個人で出来る感染予防対策は怠らず、やっと手にした自由を楽しみながらも依然気を引き締めてかかりたい、パンデミック後二度目の夏である。…… とここまで書いていたらニュース速報が入り(執筆時点は6月30日)、トルコで三度目の正直、じゃなくて三度目のワクチン接種が7月1日から開始されるとの当局発表があった。トルコ語では三度目のワクチンは「リマインド・ワクチン」と表現されているが、要は“迎え酒”よろしく“迎えワクチン”!?こちらは、今年1月からワクチン接種が最優先されていた医療従事者と50歳以上が対象である。更にバイオンテック製ワクチン(ファイザーとの共同開発ワクチン。日本でも接種されている)の一回目を接種した者には、従来の6〜8週間であった二回目までのワクチン接種待機期間が4週間に短縮されることも決定したという。私はすでに一回目の接種を終えていて二回目予約も入れているが、数日後にはワクチン予約システムで予約の前倒しが可能になるかもしれない、おそらく。

 

 

さて、前置きが長くなったがトルコの夏と言えば「ヤズルック」(トルコ語で“夏の別宅”の意味)での休暇だ。別荘持ちなんてかなりリッチな響きだが、トルコでは普通の庶民がリゾート地や避暑地にアパートや一戸建ての別宅を持っていて、長い夏をそこでのんびり過ごすというのがポリュラーな休暇スタイルだ。ヤズルックが都市近郊であれば、そこから通勤する人々もいる。持ち家でなくても、気に入った地方で数ヶ月ヤズルックを借りて滞在することもある。世界中に暮らすトルコ系移民が、トルコで所有しているヤズルックに滞在しに帰省するパターンもよく聞く。

パンデミック前までは学校が終わる6月に合わせて国内外トルコ民族大移動が起こるのが常だったが、パンデミック後は感染状況が深刻な大都市に戻ることを避けてそのままヤズルックに滞在し続ける年金生活者や、リモートワークで通勤する必要のない勤労世代も、同じくリモート授業が続く子ども達を連れて地方に滞在し続けているケースも多いようだ。

しかし、なんと優雅なことだろう。季節に合わせて住まいを変える人生とは!

これだけ聞くとトルコ人って心豊かな生活を送っているなぁと羨ましくなるが、住まいが変わっただけで日常が続くことは変わらないわけで、ヤズルックにはもれなく炊事洗濯掃除がついてくるというところも指摘せねばならない。私としては、これら家事を全てやってくれる人が別にいればヤズルックは快適な休暇の過ごし方だろうが、そうでなければ非日常の上げ膳据え膳ホテルステイに座布団三枚あげたいところである!

それでも周りのトルコ人を見ていると、子どもの頃から毎年一緒に夏を過ごして育んで来た馴染みの面々「ヤズルック友達」との友情は、なかなか絆の固いもののようである。

 

 

ところで、先ほどの三度目のワクチン速報には続きがある。すでに今年年頭に二回のワクチン接種を済ませている医療従事者と50歳以上の者は、過去に接種したワクチンが何であれ、三度目のワクチンは希望するワクチンが選べる、というのだ。ワクチンのちゃんぽん。そんな混ぜてちゃって大丈夫なのか?!と思うが、ドイツのメルケル首相も一回目はアストラゼネカ、二回目はモデルナを接種したらしいので、抗体生成には有効なのかもしれない。

ところで、この国の王様は誰よりも最先端をいっている。トルコで三度目のワクチン接種の是非が論議されるずっと前、国民の間でまだ一回目の接種さえそれほど進んでいなかった頃に、あるニュース番組のインタビューで王様は、

「…… 僕、三度目のワクチンも打ったんだよね。抗体も調べちゃった」

と言い放って、スタジオが一瞬シーンとなったことがあった。トルコ国民はこの時初めて、自国の大統領がすでに三回もワクチンを接種していたことを知ったのだった。余計なお世話だが、三回ともちゃんぽんだったのだろうか。一度目は大々的に報道されたので、王様が中国製ワクチンのシノバック(トルコ語ではシノワック)を一回は接種したのを知っているが、残り二回については神のみぞ知る、である。

 

ー了ー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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