関西人Yeni.の横から失礼します。vol.3

 

Istanbul Navi 2021年4月号

 

 

3月29日のトルコ閣議で、新たな行動規制が発表された。と言っても、3月1日に一旦緩和された規制がまた戻ってきただけである。4月にはイスラム教の断食月ラマザンが始まるので、ずっと禁止だった飲食店の接客営業再開を始めておいて、週末もかごの鳥だった国民を土曜日は自由に解放してガス抜きさせておき(案の定、緩和後にはあれよあれよと言う間に感染状況が悪化……)、ラマザンのため人々の行動範囲が狭まるタイミングでギュッと規制再強化、という感じか。なんだかなぁ。トルコは厳しいのか緩いのか。パンデミック下の“ゆるキツ生活”は、こうしてダラダラと続くのだった。

 

コロナ渦でインターネットショッピングや飲食店の宅配サービス需要が爆発的に増大し、誰もがこの一年お世話になっている、宅配業務。私も家族のご飯や食材、消耗品、おうちトレーニング用にスポーツ用品の購入と何度も利用してきたクチである。皆さんも街を歩けば頻繁に某宅配サービス会社『getir ゲティル(=持って来て、の意)』を筆頭に、無数の宅配バイクや宅配車に遭遇するだろう。さてそんなある日、日本に帰省出来ずに底を尽きた日本食材を補おうと、アジアン食材を扱うあるサイトで買い物をした。欲しかったのは寿司酢。ところが、届いたのはみりん風(ふう)だった。梱包時に何で確認しないかな イラッ。そう言えばこの店舗は以前にも、赤味噌と白味噌をひとパックずつ頼んだ時に、間違えて赤味噌を二つ送って来たから要注意ショップだったのに!ハァ〜、また返品作業か。面倒臭い。店舗担当者とアプリ上でメールのやり取りをする。庇うわけではないが一つ(だけ)感心するのは、トルコのネットショッピングサイトはとにかく対応が早いこと。店舗とすぐに連絡が取れ、最速なら翌日配達もありだ。前述のゲティルは、注文して10分ほどで配達してくれるのが売りらしい。あるいは、配達状況が手に取るようにわかる。ドライバーの現在地まで地図で表示されるのだ。ドライバーに直接連絡も取れる。確かにそれは大変素晴らしい。しかし、みりん風なのだ……。「私、みりん風じゃなくて寿司酢頼んだんですけど! イライラッ」「コンチハ!ご安心を。返品して下されば、すぐに取り替えますよ! きらりんっこれまたレスも早いのだ。梱包し直して宅配便支店に出向き、手続きを済ませる。

 

数日後、交換品が届いたので開けてみると、またみりん風が入っていたので目を疑った。「信じられへん!また間違った商品入ってたけどこっちの意図ちゃんと伝わってんの?みりん風なんか頼んでへん、寿司酢が欲しいねん、寿が!怒怒怒」「そうなんですねー シュンッ、でも正直お客さまのおっしゃる意味が分かりません。別の担当者に電話をさせますね チャッ」即答だった。何がわからん?寿司酢や言うてるやろ!また返品かっ キィーッ!!

再び梱包し直して宅配便支店に出向き、手続きを済ませる。前日もここに別の用で来た。別のネットショッピングで購入した服のサイズが合わなくて、返品しに来たのだった。この女、毎日来てるやん、と従業員に思われているだろうか……。

 

週明け。「アノネ、ワタシ例ノ店カラカケルアルヨ!」電話をして来たのはゼンジー北京(若い読者の方々はご存知ないかもしれないが、往年のお笑いマジシャンである)ばりの訛ったトルコ語を話す、中国人スタッフだった。よりによって何で彼がクレーム対応なのか……。それから、私がみりん風と寿司酢は違うこと、送って欲しいのは寿司酢であることを延々と説明したが、彼はトルコ語がほとんど聞けず喋れずで意思疎通が出来ない。あーでもないこーでもないと不毛の会話が続いた後、とうとうゼンジー君は、「チャントオクッテルアルヨ!ウチニハコレシカ在庫ナイ、間違イヨウガナイアルヨ!」と言い放った。「その在庫、すぐ写真撮って送ってよ!」ハァ〜、もう直接店に乗り込むしかないか、と思いながらゼンジー君から来た写真メールを見て唖然。何と、そこに写っていたのはまぎれもなく寿司酢、だったのだ。何でそれを最初から送らない?!「それやそれ、私の欲しいの!速攻送れ!!」……この徒労感。こうしてまた、私の一日が無駄に過ぎていく。

 

 

さらに数日後届いた箱をそーっと開けたら、三度目の正直か寿司酢が入っていた。便利で時短でストレスフリーが売りのはずが、ここまで客を疲弊させるトルコのネットショッピング、やはり甘くはない。そう言えば在庫には寿司酢しかなかったとゼンジー君は言ったが、では2度も送って来たあのみりん風は一体何だったのか、謎は依然迷宮入りしたままである。

 

ー了ー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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