関西人Yeni.の横から失礼します。vol.27

長かった冬がようやく終わり、春爛漫のイスタンブールである。毎年恒例となったチューリップ・フェスティバルも現在開催中で、市内各地で色とりどりの美しい花を咲かせていることだろう。

 

さて、早いもので私がこのコラムをスタートさせてから1年が経った。今までコロナに関するトピックをここで何度も書いてきたが、トルコでパンデミックが始まってすでに2年が過ぎ、日毎感染者数や死者数が劇的に減少し続ける昨今、WHOでもなくトルコ保健省でもなく、私は意外なところで意外な人からコロナ終焉を宣言されたのだった。

 

 

それはある週末の夜、クラシックコンサートに出かけた私たち親子二組が帰り道タクシーに乗って、さあ行き先を言おうと運転手を見た時だった。4人以上の女・子どもだけの外出時はなんとなく助手席に乗ることの多い私、真横にマスクをしていない運転手の無防備な顔があった。ハァ〜、ブルータス。お前もか。オミクロン株が出て来たあたりから、妙に解放的な雰囲気が加速したトルコで、マスクを着けない店員やタクシー運転手に出くわすことが多くなり、その度に注意して回っていた。でも素直に着ける人は少なく、「大丈夫ですってぇ〜(何を根拠に?!)」となだめられたり、「チッチッチッ(舌打ち)うっさいなぁコイツ」と逆ギレされたり、最終的には渋々着けるのだが毎回理不尽な気持ちだったのだ。そしてまた今夜も、この運転手マスクしてないし。

私:「あのぉ、マスク着けてくれません?」

ぶつくさ言いながらも着けるかと思いきや、

運:コロナ終わったで!せやからマスクも要らんねん

言い切るおっさんに、軽く衝撃を受けた。なっ・・・、終わってへんわ!反論したが、真横の超至近距離でズンズン訴えてくるので顔が近すぎる!危険や・・・こっちにつば飛ばすな!ああもうええわ、私に話しかけんといて!と諦めて、顔を背けて車の窓を開けた。

今、やっぱりトルコ一般ピープルの認識はこうなのだろうか。確かに屋外でのマスク着用義務はなくなり、ワクチン未接種者の行動を制限することも一切なくなり、リスク管理アプリ「HES(ヘス)」提示義務も撤廃。他に何が残っているかといえば、もはや換気の悪い屋内と公共交通機関でのマスク着用のみである。それも近日取っ払われる可能性を匂わせる報道は確かに、あったが。折しも季節は春真っ盛り。こうなったらもう誰も、冬眠から目覚めた彼らを止めることは出来ない(遠い目)。私も、いじわるばあさんみたいにあちこちで注意して嫌な思いをするのはもうたくさんだ。

 

でもなぁ・・・この2年でマスクが顔の一部になった今、今更外して歩くのはなんだかパンツ一丁で外を闊歩するようで恥ずかしいのは私だけか?それにマスクは結構便利だったのだ、化粧せずとも顔が隠れるし不思議な安心感があった。トルコでマスクが解禁になった後も、しつこく着け続けたら変だろうか?いつか、こんな時もあったよね〜と人類皆マスク状態だったことを懐かしく思い出したりするんだろうか。

 

 

最後に一つ、マスクの思い出を。近所のご年配トルコ人男性・ネジ雄さんと久しぶりに道端で出くわした時、マフラーと帽子とサングラスと大きめマスク仕様の私を見て、

「元気そうじゃないか、Yeni.!ふぉっふぉっふぉっ

と彼が言った時にはウケた。こめかみ以外一切見えてないし、元気かどうかなんてことより、そもそも本人判別不能やのに。面白すぎる。しかしよくわかったな、私て。同じくデッカいサングラスとぶかぶかのマスク仕様で「アンタ誰?」状態だったおじさんに、私も素早く応答した。

「ネジ雄さんも益々お元気そうで!」

マスク時代の新・社交辞令である。あと、人間が他人を認識するのって、意外に顔ではなく髪型だったりすることもわかった。ちなみに70歳を超えたネジ雄さんは、薄毛でロン毛のチョンマゲである。

 

 

 


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