関西人Yeni.の横から失礼します。vol.2

 

Istanbul Navi 2021年3月号

 

 

2021年3月11日で、トルコはパンデミックからちょうど1年を迎えた。この日、WHO(世界保健機関)がコロナウイルスをパンデミックと認定したが、トルコ政府も同日トルコでコロナウイルス感染者が初めて確認されたことを公式に発表したのだった。あれから1年か。言うは易し、体験するは難し。

誰が一番モロに影響を受けたかと考えてみて、それが真っ先に最前線で戦ってきた医療従事者の方々であることは言うまでもないのだが、同時に私は子どもたちではなかったかと思うのだ。教育現場においては各国でその対応に大きな差があったが、トルコではどうだったか。うちにはトルコの高校受験を控えた14歳の息子ポケモンがいるので、彼を通して経緯を振り返ってみたい。

 

 

2020年3月16日からトルコの学校は閉鎖され、ポケモンの学校では翌週からオンライン授業が始まった。最初の数日は録画されたビデオを観ての家庭学習だったが、直ぐにオンライン授業に切り替わり、ビデオ会議システム『ズーム』を使ってのリモート学習が始まった。最初は学校の対応が早いと感心したのも束の間、直ぐに親である私の悪夢が始まったのだった。

朝から夕方まで一日中べったりパソコンの前に座って、先生に当てられない限り発言は一切しない、ノートは取らない、教科書さえ準備しない(画面上で先生が全部見せてくれるから必要ないとポケモンは言うが)、先生の話を聞いているのかいないのか、右から左どころかちょっと目を離すとYouTubeなんかを開きゲーム映像かアニメを観てニヤニヤしている。私が近づくと素早くカチャカチャッとマウスをクリックして、シレッと画面を切り替える。君な、全部バレてるで。これでも受験生なん?!(ブチッ)

授業の合間の休憩時間もパソコンから離れないので、無理やり画面から引っ剥がして「外で運動してきぃ!」とその都度ドヤす。ところが65歳以上と20歳未満の子どもが外出禁止となってしまい、外に出すことも出来ず、仕方がないので「ア、アパートの庭で太陽に当たってこい!」と言うしかない。思春期の男子が、はいお母様♡とひなたぼっこに行くか?行く訳ない。運動は出来ないわ、友達とは一切会えないわで、籠の鳥状態である。それはそれで不憫なので、せめてネット上でコミュニケーションでもとタブレットを与えると、今度は約束した使用時間を守らない。それでまた「タブレット返せ!」「今友達とLINE電話してんねん!」「返せ言うてるやろ!!」と親子喧嘩勃発ドーン。こちらは厳しい行動規制の中、三度の食事に家族の世話で既にストレスマックスなのに、リモート学習の名の下に電子機器漬けになってしまった超不健康なポケモンを見て、ますますイライラが募る。早々に親子関係はギクシャクし、家庭の雰囲気は最悪である。しかもこれが何ヶ月も続いたのだ。あれ、一番被害被ってるのポケモンちゃうやん、私やん!(ドッカーン

それでも、8年生であるポケモンはまだ幸運だった。トルコの受験学年である8年生(高校受験生)と12年生(大学受験生)は、この1年を通じて優遇されてきた。補習や受験対策講習という名目もあり対面授業の機会が断然多く与えられたので、数ヶ月学校に通えた時期があった。その間にクラスや学年で感染者や濃厚接触者も出たが、即学級閉鎖をしてリモート学習に切り替えてまた開校、と学校もその都度柔軟に対応し乗り越えてくれた。そもそも登校させるのが不安な親や子どもには、オンライン授業という選択肢も並行して継続され、登校かリモート学習かを選べた。トルコ国家教育省は、発達段階に応じて対面授業がより必要な学年を優先して段階的に登校させてきた。行動規制緩和が進むと9月下旬から小学1年生、そして10月中旬からは小学2、3、4年生が、更に11月上旬には中学校と高校の初学年として5年生と9年生が、週二日という分散登校ではあったがそれぞれ登校を許可されたのだった(実習のある工業・芸術系高校も分散登校が許可された)。注:現在のトルコの学制は小学校が1〜4年、中学校が5〜8年、高校が9〜12年

ところがこの一年、一切登校出来なかった学年があった。このとり残された6、7、10、11年生の登校は一体いつなのかと言われているうちに時は過ぎ、結局タイミングがないまま現在に至った。まるでタチの悪い旗揚げゲームである。♪8揚げて、12揚げて、8下げないで、1揚げる、7揚げ……ないで、ガッコ閉めた♫……全く悲劇としか言いようがない。その閉塞感と鬱憤と孤独たるや。延々オンライン授業て!この学年が大事で、この学年がそうでもないなんて、誰が言える?全部が大事に決まってるやろ!!

……と色々リモート学習の文句を言ったが、オンライン授業さえろくに受けられていなかったとしたら?トルコ政府はリモート学習の迅速な導入とその体制を内外に誇ってきたが、貧富の差が激しいこの国で実際に何割の子どもが安定したインターネットに繋がって高価な電子機器を使ってまともに授業を受け続けられたのだろう。トルコでは、この1年を過ごした子どもたちのことを『喪失の世代』と呼んでいる。計り知れない、大きな喪失だ。ポケモンを見ていて、学校という存在がいかに大切なものか、通学することが子どもの心身の健康と成長にとっていかに大事か、身を以て知った。WHOによれば2022年初頭にパンデミックが終息するそうだが、あと1年もあるやん……。今年こそは、子どもたちの権利である教育機会の均等な確保に、国として是非最優先で取り組んで欲しいものである。

「亭主元気で留守がいい」というCMのフレーズが大昔流行ったが、「子どもも元気で学校がいい」。チャンチャン。

ー了ー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 読み切り![イスタンブール]/ トルコでこどもを育てています。

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