関西人Yeni.の横から失礼します。vol.17

2021.11.02Naviコラム

Istanbul Navi 2021年11月号

前回のコラム(クリック）でもトルコリラ安を嘆いたが、あれから更なる価値下落が続いていて、まさに上イラ
ストの『Squid Game(イカゲーム)』状態のトルコリラ。一体どこまで下がるのだろう。私たちトルコ国民は、果たしてこのデスゲームで生き残れるのだろうか!?

『イカゲーム』と言えば、最近東トルコのワン県を訪ねた際、地元のトルコ人女性に「『イカゲーム』すっごく良かったですよ！」と声を掛けられた。私を韓国人と間違えたのだろう。あ、それうちじゃないですぅ、私日本人なんで。あれ韓国のドラマですよね……。とほほ。しかしこんな辺境の街でも、『イカゲーム』が話題になっていることに驚いた。恐るべし、Netflix。

さて、韓国ドラマが人気だったこのワン県、実は私にとって彼の地への初めての旅だった。23年も住んでいてトルコ国内はかなり制覇したと思っていたが、東トルコのワン県とアール県には全くチャンスがないまま今に至っていた。日本からのバックパッカー達が中東諸国への拠点としてトルコを通過していた頃は、イランを目指す若者がワン県を経由して旅を続けていたし、南東トルコはシリアへの玄関口として普通に往来があった。かつてそんな平和な時代もあったのだ。あの時行ってればよかったのに、私！そうこうしているうちに、今度はトルコ軍と反政府系武装組織との衝突が激化し、彼の地では永く治安上の不安があったことで完全に遠い場所になってしまった。私のように、そのうち行けるだろうと旅の予定を先延ばしにしていると結局機会を逃してしまうので、思い立ったが行きどき、もし行きたい場所があるなら是非足を伸ばしたいものである。このパンデミックに？と思われるかも知れないが、今回実際にワンを訪れてみて、飛行機での国内移動や宿泊、現地での観光などが案外大丈夫なんだと実感できたからこそである。

そして長年想い続けた場所、ワンは美しかった。更に、思ったより都会であった。隣国イランの人々がワンによく遊びに来るというのが、わかる気がする。ソウル週末旅行のような手軽さなのだろう。さて、ワンといえばまずワン湖だ。琵琶湖の6倍ほどの大きさがあるこの巨大な塩湖、見た目は完全に海である。島まで浮かんでいるのだ。“ジャノワン”という愛称の怪獣が住むとも言われているが、私は遂にそいつを目撃出来なかった……別にずっと見張っていたわけではないが。ワンは標高が高く全体に荒涼としたハゲ山や岩山に覆われているが、ワン湖を始め水場が多いので風光明媚な風景が楽しめるのも魅力だ。また、どこに行っても必ずクルド語が聞こえてきたのも、県民の９割がクルド系であるワンならでは。地方を旅しなければ、イスタンブールにいるだけでは本当のトルコはわからないのだ。更に北に少し足を伸ばせば隣県アール県の観光名所イサクパシャ宮殿や、ノアの箱舟が漂着したと伝えられているアララット山（5,169メートル。冬場は閉山。開山時には入山許可を取り、ガイドを伴わなければならない）の雄大な姿を拝むことも可能だ。今回は遠くから一瞬チラ見出来た程度だったが、いつかあのアララット山に登ってみたい、と夢は膨らむ。夫フローラに言うと、高所恐怖症プラス大した高度じゃなくても呼吸困難に陥いる彼にぴしゃりと却下された。思い立ったが行きどきやねんけど……。

VAN(ワン)一口メモ：イランと国境を接するトルコ東部の県。クルド系住民が大半を占める。畜産業が盛んで、ワンの代名詞Van Gölü(ワン湖)を始め風光明媚な観光名所を数多く持つ美しい辺境地域である。左右の目の色が違うVan Kedisi(ワン猫)が生息することでも有名。2011年10月に起きたワン地震（マグニチュード7.2）では、600人以上が死亡した。ワンの人々は、当時現地で支援活動にあたっていた日本人のNGO職員・宮崎淳さんが、宿泊先のホテルで余震による倒壊家屋の下敷きになり犠牲となったことを今も忘れてはいない。昨今、アフガニスタンを完全支配したタリバン政権から逃れ、イランを経由して流入して来るアフガン難民が問題となっている地域でもある。