関西人Yeni.の横から失礼します。vol.5

Istanbul Navi 2021年5月号

 

 

これを書いているのは、トルコで初めて17日間に渡る『全面ロックダウン』が始まった日の翌日である。しかし私に言われせば、これは『全面ロックダウン』ではなく、『一部の人だけちょっと引きこもってみよか?』的な措置である!(怒)

それはなぜか。全人口8,300万人のトルコで1,600万人以上(イスタンブールの全人口がこのぐらい)の労働者人口が外出規制の対象外とされ、普段と変わらない出勤を余儀無くされているからだ。医療は必然としても、生産、製造、ロジスティック分野等々、外出規制対象外者リストは実に43項目にのぼるという。国境も普通に開いているので国際線が変わらず就航しており、観光客も外出規制の対象外である。お客様は神様、トルコはつくづく観光客にとってどこまでも天国なのだ。

更にロックダウンが発表されてから、ここ数日大都市から地方へのトルコ民族大移動があった。息苦しい都会で家に閉じ込められるよりマシってことだろうが、リゾート地のサマーハウスへ、故郷へと車で、飛行機で、バスでそれぞれ蜘蛛の子のように散っていったのだった。おかげで道路は脱出組で大渋滞。直前の都市間移動を、どうして政府は制限しなかったのだろう。トルコの一番人気リゾート地・ボドルムなどは、通常の4倍の人口を一気に抱えることになってしまった。感染が最も酷いイスタンブールやアンカラから地方へ、ウイルスも一緒に移動してしまったというわけだ。2020年6月の急激な規制緩和後と同じことがまた起ころうとしているのか。

では一体今、誰が家に引きこもっているのだ?前述の外出規制対象者リストを見たが、これ引きこもり対象者を書き出した方がよっぽど早いんちゃうん?…… フリーランスで主婦の私とか?あ、中学生の息子ポケモンも学校がリモート授業になったので、これで2人か。あれ、夫フローラが家にいない。そうか、フローラは生産業に携わっているので対象外なのだった。チッ……。とにかく1,600万人が今も外にいるこんな状況では、頭隠して尻隠さず、もとい、胸隠したけど丸出し、ではないのか?!

ところで今回の自称全面ロックダウンに関して、めちゃくちゃ怒っていることがある。時はイスラム教の神聖な断食月ラマザンの真っ最中にこんなことは言いたくないのだが、言わずにはいられないのだ。それは、17日間に渡るアルコール類販売禁止のお達しっぽいものが出たことである。お酒とコロナ感染にどんな関係が?

ただ、今年に入ってからの週末外出規制で、なぜかアルコール類の販売が禁止になるという既成事実が出来上がっていた。そもそもその根拠って何?ハァ〜、こうやって少しづつ少しづつ慣らしていって、気がついたらトルコもアルコール販売禁止になっていたりして。冗談ではなく、その予兆の気がしてならない。

パンデミック下の真っ当な理由として、お酒を飲むとマスクを外したままの飲食時間が長くなり、理性も失いがちになって危機感が薄まり感染リスクも高まる、と言うのはわからないでもない。だからトルコでは夜のみ営業のお酒を出すレストランや居酒屋は1年以上まともに営業できず、バーなどはもうずっと閉店したままではないか。日本でも今、飲食店の営業時間が短縮されたためお行儀の悪い『外飲み』が問題になっているが、トルコ人はバーで飲めないからといってむやみやたらに外で立って飲んだりはしない。ましてやラマザンのこの時期、断食しない人々もそれなりに他者に敬意を払って飲食やお酒を人前では遠慮しているのだ。それなのに、うち飲み用のアルコール類をどんな理由で禁止するのだ?

そう言えば不思議なのは、営業規制対象外の店舗リストをみると、バッカル(よろず屋。トルコのコンビニ的存在)、チェーン展開スーパー、個人経営マーケット、宅配サービスが許可されているレストラン、パン屋、肉屋、デザート屋、ナッツ屋…… ちょっと待ったッ!このナッツ屋て!前からずっと気になってたけど、なぜいつもナッツ屋は規制対象外なのだ?要は豆やろ、豆は必須なん?!鳩か、我々。豆はよくて、なんでお酒あかんの?!嗜好品という意味では、ナッツこそ嗜好品やん。コーヒーもタバコもそうちゃうの?!…… 違う、論点はそこではない。豆屋でも酒屋でも散髪屋でもバーでも、個人事業主は日銭を稼ぐためにこの1年以上想像を絶する大変な目にあっているのだ。死活問題なのだ!お酒だからどうの、と言う問題ではない。もしかしたら目的は別なところにある根拠なき禁止で、酒屋はどうやって生活していけばいいのだ?

腹立ちを言い出すときりがないのだが、このアルコール類販売禁止は今回のロックダウンに掛かる内務省の規制通達には明記されていない。なのに内務相が「前の週末限定の販売禁止がちょっと長くなっただけさ。ヨーロッパ諸国でも同じようなことやってるしさ」(やってへんし!)と言い放ってからラマザンの雰囲気も手伝い一気に禁止ムードになって、法的根拠がなく個人の生活志向への干渉だとして違憲であるとの反対意見が溢れる中ウヤムヤなままでロックダウンに突入してしまったのだった。この間、私のような小市民がどんな思いで限られた予算をはたいて、17日間分のアルコールを確保するために買い溜めに走ったか、重いのに何度も家を往復して必死でロックダウンに備えたかは、言うまでもないだろう。読者の皆さんもきっと、同じような思いをしたはずだ。

それなのに、今日の時点でチェーン展開スーパーではアルコール類の販売が普通に行われていたらしい。一方個人酒店では販売出来たり当局に阻止されたりと、結局どっちやねん!という状況がまだ続いている。買い溜めしたけど無くなったらどうしよう、とチビチビとケチって飲んでいる方々には、買い足しが出来るという朗報である。

…… いやいや、問題そこちゃうし!

ー了ー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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