関西人Yeni.の横から失礼します。vol.16

Istanbul Navi 2021年10月号

 

 

これを書いている時点で、為替レートが1ドル=9.23トルコリラ。きっとそのうち10リラになるだろう。リラ暴落が止まらないトルコで生活する私は、どんどん貧乏になっていく。1リラ硬貨が80円だった頃もあったのに。今では100リラ紙幣を出しても、たったの1,200円。以前はよく利用した日本のネットショップも、今ではリラ換算にすると怖くて買い物が出来ない。来年こそは日本に帰省したいと思っているが、常にドルやユーロで表示される航空運賃が一体リラで幾らになるのか、考えるのも恐ろしい。そのくせ物価上昇が異常で、スーパーに行くたびにものの値段が上がっている。

2020年3月のトルコでのパンデミック発生から1年半以上が経過し、パッと見は通常の生活に戻ったトルコで、行動規制こそほぼ無いがいつまでもダラダラ続くマスク生活、紙クズ化していく通貨、貧窮する一般ピープルの生活……。ニュースを見ても明るい話がない。気が滅入ることばかりだ。なんか面白いことないかな。

 

 

そんな今の私の密かな愉しみが、FOX TV(トルコ民放チャンネル)で月曜日20:00からしぶとく
放映中のトルコドラマ「Yasak Elma(ヤサック・エルマ=禁断のリンゴ)だ。2018年3月に放映が始まってもう3年半も続いているから、立派な長寿ドラマと言えるだろう。以前に一度ハマって観ていたがそのうち飽きてしまい長い間遠ざかっていたのだが、たまたま秋の新シリーズが始まった頃に見出したら、これがオモロくて!昔は貧乏だった成り上がりの娘ユル子が、前夫との間に出来た連れ子と共に金持ちのボンと再婚したはいいが、プレイボーイのボンはよその金持ちの性悪お嬢クム江と浮気。しかもその性悪お嬢クム江とユル子がお隣さんで友達(最悪)。やがて夫ボンの浮気現場を押さえたユル子が反逆に出、泥棒猫の性悪お嬢クム江もボンに結婚を迫る(以下、エンドレスにドロドロ続く)。はっきり言って、内容が”無いよう〜”的な、どうでもええしょーもない金の絡んだ愛憎劇である。これのどこが面白いのか?それは、登場人物に尽きる。女性たちが全てゴージャスなのである。毎シーン美しくセットされた髪、完璧なメイク、そして派手に着飾った彼女たちを観ているだけで、女の私はワクワクする。ユル子が高級ブティックで何十万円もするドレスを買おうとして、クレジットカード決済時にボンにばれてしまった時も、「ユル子、ドンくさ!」と一人突っ込むのも楽しい。金髪ユル子もいいが、私のお気に入りはこちらも成り上がりだが単純で気の良いユル子と違って頭のキレる魔性の女、黒髪のエン美である。エン美の個性は強烈で、彼女のダントツの美しさと数々の悪だくみを目で追っているだけで、私はたまらなくゾクソクするのだ。エン美の存在のみで、このドラマがこれだけ長く持ったと言っても過言ではない……知らんけど。ドラマのもう一つの魅力、それはトルコの金持ちライフをこっそり覗き見する気分になれることだ。物語は、これでもかコレでもか、というほど頻繁にボスポラス海峡沿いにある豪奢なYali(ヤル=海岸沿いに建つ邸宅のこと)内で展開される。この大都会イスタンブールの海沿いの豪邸テラスで日光浴をしたり朝食を楽しんだり、全くセレブこの上ない。気が向けばテラスに停泊させているクルーザーに乗って、ボスポラス海峡に繰り出すことも朝飯前だ。彼女たちがアゴでこき使うお手伝いさんや執事も必ずいて、アレやれだの、コレもってこいだの、ソレ突きとめろだの、下働きの彼らもワガママな金持ち連中に常に翻弄されて気の毒である。ヤルでの贅沢私生活垂れ流しの他にも、やたらと多いパーティーシーンで騒ぐハイソなゲスト達、必ずワイングラスを傾けるシーンのあるお洒落なレストランやバー、ボンの経営するリッチな会社に行き交う羽振りのいい人々、はたまたエン美の暮らすシービューが自慢の豪華マンション、ボンが不倫相手との密会に使うために借りた山奥の別荘に至るまでいやらしいほど贅(ぜい)が尽くされている。登場人物の移動には高級外車が最低一人一台用意されているのは、言うまでもないだろう。兎にも角にも、トルコセレブっぷりが半端ないのである。こんな潤った人たちが本当に存在するのだろうか?トルコの金持ちは突き抜けているから、きっとどこかに棲息しているのだろう。このドラマがトルコの一般ピープルに根強い人気があるのも、自分には一生無縁の別世界で展開される物語が、普段のパッとしない生活を忘れさせてくれ、ひと時でも夢を見せてくれるからではないか、と思ったりする。
昔世界的に流行ったアメリカのセレブ高校生青春ドラマ「ゴシップ・ガール」の登場人物に全員歳をとらせて、もっとこってりクドくさせるとこうなるのかも。内輪の男女でくっついたり離れたりと、やっていることも一緒である。ヨレヨレのジャージ姿でお尻をボリボリ掻きながら、今夜もテレビドラマに向かって一人突っ込み続けるド平民の私なのだった。

しかし、ボンである。会社経営者なのに一向に仕事をしている気配がない。オフィスでしていることといえば、携帯いじって不倫相手の性悪お嬢とWhatsApp(日本でいうLINEのようなメッセージアプリ)で「まだ怒ってんの?」とか書いてるだけ。昼間にしょっちゅう仕事サボってお嬢と山荘にシケ込んでるし。そんなことしてるからユル子に浮気ばれんねん!

ー了ー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 読み切り![イスタンブール]/ トルコでこどもを育てています。

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