関西人Yeni.の横から失礼します。vol.12

Istanbul Navi 2021年8月号

 

 

 

もうこの歳になると、結婚式に呼ばれることがほぼなくなる。周囲の友達はみんな既婚だし、トルコ人の夫フローラの親戚の結婚式にも行き尽くし、これから結婚するという若手も滅多にいない。晴れやかな席好きで祝い事好きな私はめっぽう寂しかったのだが、先日久しぶりに出席する機会に恵まれた。ずっと通っていたフラメンコ教室のクラスメートの一人デフィ子が、遂に結婚したのだった。と言う訳で、今回は今時のトルコの結婚式事情をリポートしてみたい。

 

 

パンデミック下、祝いの席も規制対象だったのが今年7月の大幅な規制緩和でほぼ自由に披露宴を行うことが出来るようになって以来、結婚式ラッシュが続いていると聞く。また規制緩和後再び感染状況が悪化したため、来たる秋にまた規制が再開される恐れもあり、トルコのカップル達はおおっぴらに式が挙げられる今のうちにとっとと済ませてしまおうぜと思うのかもしれない。

友人デフィ子の結婚式は、人前式と披露宴を兼ねたものだった。会場は世界遺産でもあるイスタンブールの歴史地区・スルタンアフメットの、とあるホテルの屋上テラスで行われたが、昨今特に室内ではなく屋外が好まれるのは出席者への感染防止の配慮も大きいと思われる。

トルコの結婚披露宴は、必ず新郎新婦のファーストダンスから始まる。デフィ子達の思い出の曲なのだろうか、エラ・フィッツジェラルドの『ドリーム・ア・リトル・ドリーム・オブ・ミー』(のリミックス)をBGMに、ロマンチックなスローダンスを披露してくれた(かなり練習したものと思われる)。こういうカップルを見るたび、自分の結婚披露宴でボン・ジョビの『オールウェイズ』をファーストダンスに選んだものの(夫フローラの大好きな曲。私は別の曲がよかったのに)、事前にダンスの練習ぐらいして色々見せ場を作っておけばよかった、そもそもファーストダンスに7分は長すぎやろと後悔するのだ。

 

 

今回は食事付きだったので(食事なしのカクテルパーティーや、ノンアルコールドリンクとケーキだけの披露宴もある)、ファーストダンスの前後にドリンクと前菜が運ばれ、参列客は飲食を開始する。この間新郎新婦は各テーブルを回って挨拶をし、参列客と記念写真撮影を進める。新郎新婦の側に巾着袋を持って佇むのは、花嫁の近しい友人か親戚の女性で、各テーブルの参列客はご祝儀をこの巾着袋に入れるのがお約束だ。私の場合もそうだったが、かつては新郎新婦の胸元か、体に斜めに掛けた幅広の帯リボンの上に、金(きん)や現金を安全ピンでブスブスと留めるご祝儀スタイルがポピュラーだったが、現在はそっと巾着袋に納めるスマートなやり方が主流だ。新郎新婦が各テーブルを回る間、雇われDJの流す音楽はずっと鳴り続け、アップテンポとスローな曲がランダムに続く。前半はスペイン語の曲ばかり、後半はフランス語の曲だったのは、二人の付き合いが始まった場所がスペインだったことや、フラメンコ好きの新婦に加え一時フランスに暮らした新郎のこだわりかもしれない。

曲はどんどんアップテンポになり、新郎新婦と参列客が踊り始める中、接客をするギャルソン達がどうもぎこちない。人数がいる割には呼んでも全然来ないし、全く目が利かない。観光業に従事するフローラ曰く、パンデミック以降大打撃を受けたホテル業界で、それまでのベテラン店員達は退職したり解雇させられざるを得なくなり、再びの規制緩和で営業が再開したのはいいが今度は不慣れな新人ばかりで良い人材がなかなかいないのでは、と推察している。

新郎新婦の二度目の登場で、人前式が始まった。トルコでは役所で結婚式担当役人の立会いの元、役所内のホールで結婚式を行うのが普通だが、披露宴会場に役人を呼ぶことも可能だ。私は、人前結婚式会場だった役所から披露宴会場のレストランまで参列客を移動させることになってしまい、一日中足労を掛けてしまったので、出来れば同じ場所で全て終えてしまうのがゲストに優しい結婚披露宴の在り方だろう。ただ、これが出来ないウラ事情もある。役所の人前結婚式にだけ招待される人々が多々いる場合である……!

さて、デフィ子の式と自分のをいちいち比較してきたが、「自分がやらなかったこと」で一番深く後悔したのは娘と父親のスローダンスだった。人前式が終わった後、デフィ子とお父さんがしっぽりと踊り始めた。流れたのは、ナット・キング・コールとナタリー・コールの『アンフォーゲタブル』。実父であるナット・キング・コールが生前ソロで歌ったこの曲、彼の死後に娘のナタリー・コールが亡き父の声の上に重ねてデュエットとして録音したというエピソードがある。たまたまこれを知っていた私、この曲をバックに踊るデフィ子父娘を見てどうして泣かずにおられようか!!嫁ぐ娘・デフィ子と踊るお父さんは、一体何を思っただろう。ダンスが終わる頃、新郎がお父さんの後ろに近づき、「お父さんそろそろ僕と代わってもらえますかね(これも演出?!)」とばかりに新婦の手を取ろうとした。少し胸がチクッとする瞬間だったが、するとお父さん、何やら新郎に懇々と話しかけ始めた。長い。何を訴えているのだろう。

「お前なぁ、もし娘泣かしたら…… どうなるかわかってるやろな

と脅したかどうか。新郎君、どうかお父さんにシバかれないようにデフィ子をずっと大切にしてね。

 

 

ー了ー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 読み切り![イスタンブール]/ トルコでこどもを育てています。

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